
サイバー攻撃の手法として、近年増加しているのが「標的型攻撃メール」です。
かつては官公庁や大手企業がターゲットになっていましたが、昨今では中小企業もターゲットになっています。つまり、いつ自分が被害者になってもおかしくないのです。
今回は、大切な情報資産を盗まれないために、知っておきたいポイントを中心に「標的型攻撃メール」についてご紹介します。
目次
標的型攻撃メールとは?
悪質なプログラムを添付したり、不正サイトへのリンクを貼ったメールを送付し、それをクリックさせることでコンピューターやサーバーなどを乗っ取り、企業や組織の情報資産を盗み取るのが標的型攻撃メールの目的です。
受信者が不審がらないよう、業務に関係したメールのように偽装しているため、誤ってメールを開いてしまう被害が後を絶ちません。
以下のようなメールを受信したときは、注意が必要です。
・不可解な内容のメール
心当たりのない会社から「請求書」が届いたり、すでに緊急連絡網があるはずのに「当社では新しく緊急連絡網を整備することにしました」というメールが届いたり、会社のメールアドレスを登録していないカード会社からの連絡だったり、何か不可解な部分があるのが標的型攻撃メールです。
あまり意識せずに読むと流してしまうかもしれませんが、よく読むと違和感に気付くはずです。耳慣れない言い回しを使ったメールで、なおかつメール内にリンクがある場合は、標的型攻撃メールの可能性が高いです。
また、外国から送信されている場合が多いので、日本語の言い回しが少しおかしいなというような場合も要注意です。
・表示されているURLと異なるURLがリンクされている
表示されているURLとリンク先のURLが異なる場合も、標的型攻撃メールであるケースが多いです。URLの上にマウスを置いたときに、画面の左下などにリンク先のURLが表示される場合にはそれを見て確認できます。知っているドメイン以外のURLは開かないのが鉄則です。
また、スマートフォンの場合にはリンク先URLを表示できない場合が多いです。特に注意が必要です。
・送信元のアドレスのドメインがおかしい
送信元のメールアドレスもおかしい場合が多いです。ドメインが偽物のドメインだったり、フリーアドレスのものだったり、表示されているメールアドレスと実際のメールアドレスが違う場合もあります。送信元のアドレスのドメインが、本当にその相手がいつも使っているものなのかどうか、確認することが重要です。
今日からできる標的型攻撃メールの対策4選
では、標的型攻撃メールの被害に遭わないために、私たちができる対策にはどんなものがあるでしょうか。
OSやアプリケーションを最新の状態に保つ
使用しているOSやアプリケーションに脆弱性が認められた場合、そこからあっという間にウイルスが侵入してしまいます。標的型攻撃メールへの対策として、もっとも基本的かつ簡単にできることとして、OSやアプリケーションを常に最新の状態に保つことが挙げられます。更新プログラムが届いたら、できるだけ早くアップデートすることを心掛けましょう。
従業員に対して、標的型攻撃メールの教育や訓練を行う
ウイルスソフトを導入し、メール設定を行っていたとしても、標的型攻撃メールが従業員の手元に届いてしまう可能性は十分に考えられます。通常のメールと見分けがつかないような標的型攻撃メールも増えているため、結局のところ、人の手で防衛するという意識を従業員全員が持つ必要があります。
不審なメールの特徴を共有し、万が一そのようなメールを受信してしまった場合、どのように対応すべきかを、日頃から周知徹底しておくようにしましょう。
テキストメール表示にする
標的型攻撃メールは、本文中のファイルやリンクを開いてしまうことによってウイルスに感染する仕組みです。つまり、ファイルやリンクを開かなければ、ウイルスの脅威に晒される心配はありません。
メールソフトの設定を「Webメール表示」ではなく、「テキストメール表示」にしておくことで、誤ってクリックをしてしまったり、タッチスクリーンで操作をしている際に思いがけず触れてしまったりすることができます。全ての場合でテキストメール表示にできるわけではありませんが、可能な限りテキストメール表示にすることで、メール本文のリンクを無効化することは、標的型攻撃メール対策としてとても有効です。
厳重なメールチェック
受信したメールは容易に信頼せず、厳重なチェックが必要です。。件名から本文内のリンク、添付ファイルに至るまでしっかり確認し、被害を未然に防ぐようにします。
開封前
- 件名・差出人
- 身に覚えのある内容かどうか
- 差出人のアドレス(閲覧可能なメーラーあり)
- 既にやりとりのある相手かどうか
- メールアドレスのドメインは不正なものでないか
- 覚えのないフリーメールアドレスからの受信ではないか
本文
- URLリンク
- リンクの記述とジャンプ先のURLは同一か
- ジャンプ先のURLは信頼できるドメインか
- 署名内容
- 署名の相手は実在する相手か
- 電子署名による確認が可能か
添付ファイル
- ファイル形式
- .exe、.scrなどの実行ファイル形式ではないか
- .zipなどの圧縮ファイル形式ではないか
- アイコン・拡張子
- 異なる形式のものに偽装されていないか
- ショートカットアイコン
- .lnk形式のファイルではないか
新世代のAI型ウイルス対策ソフトを導入する
標的型攻撃メールの本当に恐ろしいところは、新しいウイルスを自分たち専用に作成して送りつけてくる場合があることです。既存のウイルス対策ソフトは、パターンファイル方式といって、他社に送付されたウイルスを収集し、そのパターンを各パソコンに配信することで警告を出す仕組みになっています。ですから、自分たち専用に作成された新しいウイルスに対しては、全く効力がありません。
新世代のAI型ウイルス対策ソフトは、パターンファイル形式ではなく、そのファイルそのものをAIが認識して、ウイルスかどうかを判断しますので、自分たち専用に作成された新しいウイルスであっても検知できる可能性が高いのです。価格もこなれてきていますので、ぜひ新世代のAI型ウイルス対策ソフトの導入をご検討ください。
標的型攻撃メールの特徴
リンク先がおかしいURL
メールに記載されたURLリンクには、マルウェア感染のリスクがあるため、細心の注意が必要です。特に、表示されているリンク先と実際のリンク先が異なる場合は非常に危険です。
リンクの安全性を確認する方法はありますが、誤ってクリックすると重大な被害を招く恐れがあるため、リンクには基本的に触れないことが最善です。調査が必要な場合は、リンクをクリックせず、URLをコピーして安全に確認するよう心がけてください。また、URLのドメインが正規のものであるかを確認することも重要です。
不自然な日本語・フォント
日本語として不自然な表現や、日本語にない文字やフォントが使われているメールには注意が必要です。不自然な日本語の言い回しや、中国語(繁体字や簡体字)が混じっている場合、あるいは英語や特殊な文字が含まれるメールは、日本人が作成したものではない可能性が高いため、警戒しましょう。
こうした特徴は、多くの攻撃メールが海外から送られて来ている場合に多く見られます
心当たりのない送信元からのメール
実在の組織や人物を差出人として装ったメールは、標的型メールと判断しにくい場合があります。しかし、差出人情報を詳しく確認するれば、不審な点を見抜けることもあります。
- 知らない人物からのメール
- 内容に心当たりがないメール
- フリーアドレスからのメール
- 署名内容の誤り
業務内容や所属部署によって異なる場合もありますが、基本的には上記に注意しましょう。
取引先や関連企業からのメールであっても、知らない人物からの突然の連絡や、身に覚えのないメールには警戒が必要です。また、署名の内容に不審な点がある場合も注意を払いましょう。たとえば、架空の組織名や電話番号が記載されている、差出人のメールアドレスと署名内のアドレスが一致しないといった場合は、疑わしいメールである可能性があります。
興味を引き、開封をうながす件名
標的型攻撃メールでは、受信者の興味を引き、思わず開けたくなるような件名を使う手口がよく見られます。ソーシャルエンジニアリングの手法を活用し、受信者が関心を持ちそうな内容や業務関連の情報を調べた上でメールを作成している場合もあります。
ただし、自部門や担当業務の特性によっては判断が難しいこともあるため、業務内容や他の識別ポイントも考慮して慎重に判断する必要があります。
- 【緊急】【重要】【至急】などと記載のある件名
- 外部との対応業務に関連する件名
- 求人関係の問い合わせ・履歴書送付
- 自社製品に関する問い合わせ・クレーム
- 取材依頼やイベント招待
- 荷物の配送
- 組織全体を対象とする文書類
- 資料の再送や差し替え
- 人事情報、事業方針
- 本文中で添付ファイルの開封やURLへのアクセスを強く促している
あやしい添付ファイルなど
メールに添付ファイルがある時点で慎重な取り扱いが必要です。また、文書ファイル形式でないアイコン型のファイルについても注意します。
- 実行ファイル(「exe」「scr」等)の添付)
- ショートカットファイルの添付(「lnk」など)
- アイコンの偽装
- ファイル拡張子の偽装
一見すれば単なる文書ファイルでも、RLO偽装などによって拡張子が偽装されていて実はマルウェアが含まれたファイルである、ということもあります。警戒しておきましょう。
もし標的型攻撃メールを開いてしまったら…?
どんなに注意をしていても、標的型攻撃メールを開いてしまう方は少なくありません。もし誤って標的型攻撃メールを開いてしまった場合、どんな対応をとればいいのかという点についてもご紹介しておきます。
・メールを開封しただけの場合
メールを開封しただけで、リンクや添付ファイルをクリックしていない場合は、大きな問題にならないと考えられます。念のため、システム担当者へ報告しておきましょう。
・リンクや添付ファイルをクリックしてしまった場合
メールを開封しただけではなく、リンクや添付ファイルをクリックしてしまった場合には、システムがウイルスに感染している可能性があります。被害が拡大しないよう、パソコンをネットワークから切断してください。
すぐにシステム担当者に連絡してください。その指示に従って動きましょう。
いずれの場合でも、気付いたときに素早く対応するという点がポイントです。
標的型攻撃メールの手口は巧妙化していますが、正しい知識を持っていれば被害を防止できます。
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