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個人情報保護法の3年ごと見直しの方向性が固まる~2025年度国会で改正か~

個人情報保護法の3年ごと見直しの方向性が固まる~2025年度国会で改正か~
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プライバシーザムライ 中 康二です(オプティマ・ソリューションズ株式会社 代表取締役)。ソニー出身。プライバシーマークとISMSの専門家。個人情報保護/情報セキュリティに関して、最新の情報を皆様にわかりやすく発信しています。

皆さんこんにちは。
プライバシーザムライ中康二です。

現在施行されている個人情報保護法の附則第10条には「施行後3年ごとに見直す」という規定があり、個人情報保護法を主管する個人情報保護委員会 (PPC)は、それに基づいて「いわゆる3年ごと見直し」という改正検討を行っています。現在の個人情報保護法が施行されたのが(大きく見て)2022年4月であるため、2025年春の改正を見据えて見直し作業を進めています。

2023年11月から、様々な団体や有識者へのヒアリングを行い、その内容に基づいて2024年6月に「中間整理」という文書を発表。それをもとにパブリックコメントを実施し、7月に「検討会」を設置しました。今後はこの検討会において様々な議論を行い、今年中に方向性を固めたうえで、来年の通常国会への提出を目指すものと思われます。

今回は中間整理の内容をまとめて、皆様に共有したいと思います。

今回の「いわゆる3年ごとの見直し」の中間整理の概要

(1)個人の権利利益の保護について

①生体データについて、現行法では生体認証に用いるためのデータに関して、個人識別情報として単独でも個人情報とする旨が決められていますが、それ以上の取り扱いに関する規定はなく、一般の個人情報と同じ取り扱いとなっています。これについて、特に要保護性が高い顔写真データなどに関して、利用目的の厳格化や本人による事後的な利用停止などが検討されています。また、不適正利用や適正な取得に関する規律の明確化も検討されています。
②オプトアウト制度の見直しが検討され、提供する場合の利用目的や身元確認義務の強化、ならびに提供を受ける場合の取得の経緯や取得元の身元確認などの強化が検討されています。
③こどもの個人情報に対する保護強化が検討されており、法定代理人の関与や利用停止請求権の拡充、安全管理措置義務の強化など含まれています。(16歳未満がこどもとなるようです
④消費者契約法などを参考にして、消費者団体による差止請求や被害回復制度の導入が検討されています。

(2)個人情報保護委員会による監視・監督について

①悪質な違反行為に対する抑止力を強化するため、海外で広がっている課徴金制度の導入が検討されています。また、勧告・命令についてもさらに実効力のあるものにすることが検討されています。
②刑事罰の適用対象を拡大し、重大な個人情報侵害に対する厳罰化が検討されています。
③漏えい等報告の「速報」について、事業者の負担が重いことから、一部のケースにおいて速報を省略することを検討しています。また違法な第三者提供に関しても報告義務を設けることが検討されています。

(3)データ利活用に向けた取組支援について

①データ利活用を促進するため、本人同意を要しないデータ利用に関するガイドラインやルールの整備が検討されています。
②各企業でPIA(プライバシーインパクトアセスメント)を行うことや、個人データの取扱いに関する責任者(DPO)を置くことの促進が検討されています。

中間整理に対する各団体の反応

個人情報保護委員会では、経済団体と消費者団体を「関係の深いステークホルダー」と位置づけ、今回の見直しに関して継続的に議論したいとしています。今回の中間整理に対して、各団体は下記のような意見を提出しています。

日本経済団体連合会(経団連)
課徴金制度に関して強く反対。消費者団体による差止請求や被害回復制度に対しても強く反対。個人情報保護委員会による過去の執行等に強い不信感があるとの意見表明。

新経済連盟
課徴金制度に関して強く反対。消費者団体による差止請求や被害回復制度に対しても強く反対。慎重な議論を求めています。

日本IT団体連盟
課徴金制度に関しては慎重な議論を求める立場。個人情報保護委員会の関与により、どのように個人情報を活用した新たな産業の創出及び発展などが行われているのかを明確にしてほしいとの要望。

主婦連合会
課徴金制度に関して賛成。消費者団体による差止請求や被害回復制度に対しても賛成。生体データを要配慮個人情報に含めるべきだとしているほか、ほぼ全ての項目で厳格化に賛成。

全国消費者団体連合会
課徴金制度に関して賛成。消費者団体による差止請求や被害回復制度に対しても賛成。生体データを要配慮個人情報として扱うことや、電話番号、メールアドレス、Cookie ID などについて、個人識別情報に含めることを提案。

全国消費生活相談員協会
課徴金制度に関して賛成。消費者団体による差止請求や被害回復制度に対しても賛成。ほぼ全ての項目で厳格化に賛成。

このように概観すると、経済団体と消費者団体で議論が真っ二つに割れていることが分かり、興味深いです。

この先も、個人情報保護法の改正がどのように進んでいくのか、ウォッチしていきたいと思います。

個人情報保護委員会(PPC)いわゆる3年ごと見直しについて
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/3nengotominaoshi

この内容が皆さんにとって何かの参考になればと思います。

今後も新しい情報が入りましたら、皆様にシェアいたしますね。

プライバシーザムライ
中 康二

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