「気づきのトリガーを芸術にも、生活にも」をミッションに掲げ、日常生活の中でより多くの人がアートに出会える機会をつくる事業を展開している株式会社The Chain Museum。同社は事業成長のスピードに合わせた情報管理体制を整えるべく、2021年4月にPマークを取得、2023年6月に更新しました。同社にとって、Pマーク取得がどのようなメリットをもたらしたか。また、どのような体制で取り組まれたか。今回は、コーポレートマネージャーの櫻場 敏之氏と、経営企画をご担当されている池田 奈津氏に詳しくお話を伺いました。
御社はどのような企業ですか?
一言で表すと「現代アートを軸として、オンラインとオフラインの両面からアーティストの活躍の場を広げていく企業」です。アーティストと鑑賞者の新しい関係性を構築できるプラットフォーム「ArtSticker(アートスティッカー)」を提供することで、オンラインで現代アートに触れていただける環境づくりをしています。
また、今、お越しいただいているオフィスもそうですが、ホテルや商業施設、オフィスなど、リアルのアート空間をプロデュースすることにも注力しています。
ArtSticker事業について詳しく伺えますか?
ArtStickerは、現代アートの情報に触れていただいたり、美術館の展覧会や芸術祭などのチケットを購入いただいたりと、鑑賞者のさまざまなご要望にお応えするプラットフォームです。
ArtSticker には、初期のころから、アーティストの方々を支援できる「スティッカー」という機能が備わっています。「アートをもっと身近なものにしたい」という想いから、この機能を開発しました。
また、アート作品を購入できるEC機能や、音声ガイドの機能なども提供しており、日々アップデートし続けています。どれくらいアートを生活に取り入れているかという度合いは十人十色ですから、スマホひとつで気軽にアートを楽しんでいただけることにも意味があるのではないでしょうか。
ArtStickerを通して、日常の生活の中に、もっとアートに出会う機会ができるといいなと思っています。
Pマークを取得しようと思ったきっかけは何ですか?
最初のきっかけは、ArtStickerで「チケット機能」をつくろうという声があがったタイミングです。「チケット機能」とは、より多くの鑑賞者が美術館や芸術祭などに来ていただきやすくするための、オンラインで利用できるチケット販売機能です。
Pマークを取得しようと思ったのは、まさにその時でした。「さまざまな個人情報が集まることになるこのタイミングで、社内全体の『個人情報を取り扱うという意識』をブラッシュアップしなければならないな」と思ったことを、今でも覚えています。
また、社内の意識だけではなく、私たちのサービスを導入してくださる美術館や芸術祭関係者の方々にも「この会社は個人情報の取り扱いに関するリテラシーがしっかりしている」と安心していただきたいという想いも強くあり、Pマーク取得のためのプロジェクトを立ち上げることにしました。
Pマークを取得したことで感じたメリットをお聞かせいただけますか?
弊社はスタートアップ企業であり、様々なバックグラウンドのメンバーが集まっているため、個人情報を取り扱う上での意識レベルが統一されていませんでした。Pマーク取得を機に、個人情報を取り扱うことの重要性を現場に浸透させることができ、組織全体として高い水準で意識レベルを揃えられたことは、本当に大きなメリットだったと感じています。
Pマークの取得をきっかけに新たに強化したセキュリティ対策はありますか?
Pマーク取得の取り組みを通して、これまで単純に「必要だと思ったから」という理由で実施してきたセキュリティ対策の意味を再認識できました。これにより、従来から導入していたセキュリティの管理方法を見直すなど、情報管理体制を細かいところまでフォロー・強化する動きが増えてきたと感じています。
コンサルティング会社に依頼をしようと思ったきっかけは何ですか?
Pマークの取得を目指した当時は、メンバーが10名程度しかいませんでした。何から手をつけたらいいのかも、そして調べて得た情報が正しいのかどうかも、何も分からない状態だったのです。「最短でPマークを取得するためには、プロに任せるのが一番早い」と思いました。
オプティマ・ソリューションズに依頼して良かったなと感じたことはありますか?
プロジェクトを進めるにあたり、「依頼してよかった!」と感じる日々でした。規程類・記録類のフォーマットを用意していただけたのも助かりましたし、それをどう活用していくのかも詳しくサポートしていただきました。今も変わらずサポートしてくださっているので、とても助かっています。
特に「個人情報の洗い出し」が最も難関だったのですが、「気になっている箇所をすべて共有してくださいね」と言っていただいて、細かく精査できたのも助かりました。
Pマーク取得にあたり、特にどのようなことに最も時間がかかりましたか?
弊社は、着手から半年くらいで審査に通過して、Pマークを取得することができました。その中で、一番時間がかかったのは「個人情報の洗い出し」でした。半年のうち数ヶ月をここだけに費やしたと思います。
例えば、ArtStickerというひとつのサービスを取り上げても、さまざまな機能を備えていますので、その機能ごとにどのような個人情報が入ってきて、どのように利用されているのか、一つ一つ見直し、精査していきました。その後は、御社にサポートしていただきながら、洗い出した個人情報に基づいてリスク分析をしていただきました。
何が最も大変でしたか?
先ほどもお伝えしたように、やはり「個人情報の洗い出し」が最も大変でした。特にその頃、大手企業や美術館・博物館などからもPマークを取得してほしいとの要望があり、更なる信頼獲得のためにも「最短で取得したい」という思いが強くありました。そのため、急ピッチで作業を進めたことを覚えています。
現在はどのような課題に取り組んでいますか?
今、私たちが課題として感じていることは、「会社の成長と共に増える新しい個人情報の取り扱いに正確に対処していくこと」です。次々と新しい事業やプロジェクトが立ち上がっていく中、コーポレートチームだけで正確な情報管理を行っていくのには限界があります。そこで、各事業部のリーダーにも責任者として協力してもらう体制にしました。
また、今後更に会社が大きくなることも考えながら、改めて会社全体としての意識をブラッシュアップしているところです。そのために、御社のサポートのもと、新しく発生する個人情報を慎重に取り扱い、研修体制を改善するなど、「運用していくこと」を意識しています。
責任者向けの研修なども行ったのですか?
作成したルールに基づいて、毎月定例ミーティングを開催しています。ここでは、アサインした責任者それぞれに役割を与え、各部門の個人情報を正確に特定することに努めています。この工程においても、御社に用意していただいたマニュアルを社内用にまとめ、社内に浸透させています。
その事業部ならではの細かな質問が寄せられることもありましたか?
随時、各事業部から質問が来ることもあります。しかし、まずは個人情報をリストアップして整理するという体制を整えました。これはPマーク取得時に御社コンサルタントの方にいただいたアドバイスをもとにしたものです。
現地審査の印象はどのようなものでしたか?
審査ということもあって緊張していたのですが、私たちが思っている以上に和気あいあいとした感じでした。審査の方に頂く指摘も的確なものでしたし、何回かやり取りしていただいたなかでの指摘事項対応でしたので、問題なく対応できたのを覚えています。
更新審査のときはどうでしたか?
今回私たちが行った更新審査も取得の時と同じように感じました。思っていたよりも和やかな雰囲気でした。
これからPマークの取得に取り組まれる方に、「熱いヒトコト」をお願いします
さまざまな企業様とお取引させていただくにあたり、Pマークを取得しておいて本当によかったと思います。Pマークの導入・運用に真剣に取り組んだことが自信になり、「私たちは個人情報を適切に管理している企業なのでご安心ください」と社外に自信を持ってアピールすることができるようになりました。
弊社はまだまだ小さなスタートアップ企業ですが、だからこそ、堂々と「Pマーク取得済みです」とお伝えできるのはとてもありがたいです。Pマークを取得しているということは、「会社の成長と共に増えていく個人情報を洗い直し、改善を行っていく、という取り組みをゆるみなく進めている」ことを対外的に示すためのなによりの証拠になる、と改めて実感しています。
また、社内の意識をブラッシュアップするという点でも、Pマーク取得は最短ルートだと思います。美術館、芸術祭、ホテル、商業施設、全てのお客様へのアピールになることはもちろんですが、共に働くメンバーの「組織人としての意識」がさらに強まっていることを感じています。
個人情報の取り扱いは、社内で教育して終わりではなく、その運用を継続していくことも大切です。企業活動を続けていく以上、そして個人情報を取り扱う以上、Pマークを取らない手はないでしょう。
この度は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!